3日目

翌朝は7時半起床。体調、よーし!シャワーを浴びて昨日同様ホテルの朝食へ。
 
昨晩のレストランNiliでの超満腹とのバランスをとるために、今朝は飲み物だけにしておこう…という思いはどこへやら、いざ食堂で各プレートに盛られた料理や食材を眺めると、これもおいしそう、あの料理は昨日はなかった、などと興味と食欲がわいてきて、結局腹九分目までしっかりいただいてしまった。妻に至っては、食事終盤にさしかかったというのに、サーモンやチーズなどの割とヘビーな料理を一皿いっぱい・色とりどりにして満面の笑みで戻ってきて、見事に平らげてしまった。曰く、「君の倍食べてる。昨晩の食事で胃が拡張した。」とのこと。テレビゲーム「風来のシレン」では、満腹状態でシレンがおにぎりを食べると満腹度の限界値がアップするが、あれはよく考えられたゲームシステムだなあと感心した。
 
10時前、ハスキー犬アクティビティーへ。三日連続でラップランドサファリ社にお世話になる。生後5ヶ月の双子のハスキーワンコたちを連れて、2名のガイドさんと一時間くらい一緒に森林浴しながら歩く。賢く愛くるしいワンコ。空気もとても美味しい。道もよく整備されていて、木でできた道は昨年作り直したばかりとのこと。蟻の巣に驚いていたら、ガイドさんが巣を木の枝でつついている。びっしり蟻が群がった枝をこちらに示して「枝を舐めるとサルミアッキ(フィンランド人が大好きな不味いお菓子)の味がするよ」と教えてくれるが、うまいのか不味いのかの真意は不明。
 
ともあれ、なんとなく気が合う感じのガイドさんだったことや、聞いてみたいことがいろいろと浮かんだこともあり、海外に来てから一番英語で話をしたひとときだった。もしかしたら、お互いに英語が母国語ではない、というのも話しやすい要因なのかもしれない。また、こちらが理解しやすいように、一つのトピックについて、同じ意味の言葉を別の言葉で言い換えたりしながら説明してくださっているのも嬉しい。相手が理解できる言葉を探す、というのは対話の成功の秘訣だなあと思った。
 
ハイキングの歩みを進めてサンタクロースの丘に着く。森はコース上が整備されていたが、この美しい丘は丘全体が整備されている。日本人名で日付入りで植樹されているモミの木が規則正しく並んでいる。名前や日付と並んでウエディングと書いているものもあり、我々もハネムーンでフィンランドにきている、と伝えると温かみのある言葉で祝ってくれた。草刈りが行き届いているのでカットが大変かと聞くと、モスキート(蚊)も多いし広大な敷地なので本当に大変だと笑っていた。グーグルの自動運転車ならぬ、自動草刈り機があったら便利だろうなあと思った。
 
スタート地点に戻ってきて、小屋でコーヒーとパンをいただきながらハスキー犬の育成方法や犬ぞりについて話を聞かせてもらう。300頭ものハスキー犬がおり、飼育し、訓練しているという。訓練の時期や、実戦投入の時期、犬ぞりの際にはどんな年齢のどんな特徴の犬をどのポジションで走らせるか、名前をつけるときに300頭もいると大変じゃないか、など、質問してみたりしながら興味深い話をいろいろと教えてもらう。教えてもらいながら、クロワッサンやマフィン、コーヒーをいただき、くつろがせてもらう。ラップランドサファリ社のコーヒーカップは木製で持ち手部分の形状に特徴がある(持ち手が水平方向に長く、手のひら全体で掴める)。初日にも素敵だと思ったが、このコップ、欲しいなあ。コップが気に入ったと伝えると、木にお酒を飲ませて作るらしい。アルカホリックツリーだね、と笑う。
 
小屋から出ると何頭かのハスキー犬をガイドさんが紹介してくれて、じゃれあう。13歳の大人しく優しそうな白い雌犬(名前はなんだったかな)や、元気がよくて新しい人が大好きな7歳の雄犬(名前はディーゼル)、左右で瞳の色が異なる年齢不詳の雄犬、腹ペコで餌のトレイを口に咥えている犬、子育て中の犬など。最初はどの犬も同じに見えたが、一頭一頭について年齢を聞いたり性格を聞いたりしながら触れ合うと、それぞれに個性があることに気づかされる。今ならそれがわかる、と伝えるとガイドさんはとても喜んでくれている。
 
12時、本来はホテルへ送ってもらってお別れだが、車中の会話の中で、どこに行ったかやこれからどこへ行く予定かなどを伝えていると、「まだ博物館を見ていないの?行きたいなら車で送るよ」と言ってくださり、お言葉に甘えて送っていただいた。ラップランドサファリのお兄さん、本当にありがとう(ちゃんと、フェイスブックでシェアしますね)。
 
12時過ぎ、博物館到着。2時間半くらいかけてじっくり見て回る。オーロラの上映や、オーロラの原理、民族衣装、ドイツ軍とのかかわり、第二次世界大戦前後の歴史、北極圏の生態系や気候、白夜の原理がわかる地球儀つき模型、木材産業など、飽きさせずにわかりやすく説明する姿勢が随所で見受けられた。面白い博物館でもう少しじっくり勉強したかったが、日が暮れてしまうのでほどほどにして退出。
 
15時のおやつはマクドナルドにしようかスキャンバーガーにしようか迷ったが、両方イマイチと思い退出。結局、ホテルそばのチョコデリというお店でケーキ。美味い。濃厚だ。コーヒー消費量が増すのもうなずける。食べたら余計にお腹が空いてきて、ホテル向かいのコーヒーハウスへ。コーヒーもいいけど食事はどうかな、ということで併設のピザ屋さんであるロッソに吸い込まれて、スープやピザを注文(注文後にかなりの時間を待って、2日目の日記を投稿する準備が捗った)。そして、出されたピザのでかさよ(なんだこりゃ〜、と声に出してしまう大きさ!)。パスタを頼むかどうか迷って、足りなかったら頼もう、とした判断は大正解であった。日本の感覚で頼むのはよそうと学習した。
 
ピザを食べ終えて、昨日の日記を投稿したり、会社のメールチェックをしていたら17時前になってしまった(会社は弟が皆様と協働してくださり無事にまわっている。お客様にもご理解・ご協力を賜わり本当にありがとうございます)。さて、ヘルシンキ行きのサンタクロースエクスプレスの発車時刻は17時54分。あと40分くらいで駅まで行かないといけない。ホテルに戻って、預けていたリュックサックやスーツケースを受け取って、ホテルを離れる。タクシー?いや、歩こう。ありがとうホテルサンタクロース、ありがとうロバニエミ。
 
発車時刻に間に合うか!?昨日下見で歩いていたこともあり、また、ロバニエミの街をあとにする感慨もあり、焦りもほどほどに、3キロほどの駅への道を楽しく歩く。途中、駅に直接向かうか、Kスーパーマーケットに寄って食料を調達するかの選択に迫られる。食いしん坊な我々は、5分で買おう、とスーパーマーケットへ向かった。これは一部を除いて成功した。
 
スーパーマーケットでは、まっしぐらにお菓子コーナーへ。妻がポテトチップスを食べたいと言う。ほどなくしてポテチコーナーが見つかったが、笑ってしまうくらいの袋の大きさだ。全てのメーカーの袋が統一された大きさなのか、均一にでかい。日本のポテチの最大サイズ(ラージパック?)の2〜3倍くらいはある大きさだ。とても食べきれなくなりそうだし、ハズレで量が多いと辛いので、比較的まともそうなボリュームのプリングルスの筒を購入(これも日本では見かけない筒の長さ)。また、1.5リットルの水(なんとこれは炭酸水だった!)や、ヨーグルト、ピーナッツ、ビール缶なども購入。レジが割と混雑していたため時間はさらに切迫したが、妻との連携プレーで会計は瞬時に済み、スーパーマーケットをあとにした。
 
さあ、ロバニエミ中央駅へ!既にチケットは手元にあるため、あとは乗るだけらしい。どの電車が目的の電車なのかどうかなどに若干不安はあったものの、チケットに書いてある車両表示はほどなくして見つかり、無事に乗車完了。二階建ての寝台車だ。
 
ヘルシンキ行き。到着予定時刻は午前7時。約11時間の列車の旅だ。今晩はこの列車での車中泊だ。何もチェックもなしに乗車したが、列車が動き出してすぐに車掌さんによる部屋へのノック。検札も完了してホッと一息だ。
 
列車の居室に着くと、これは狭いぞ、と思った。我々でやや狭いと感じるのだから、背の高いフィンランド人の皆様には窮屈だろう。しかし、二段ベッドもあるし、外がよく見える場所に椅子も出せるし、トイレとシャワーがわずか数十センチ四方の狭い空間に共存する素敵なしくみも備えている。ビールを飲み始めて落ち着いてみると、当初狭いと感じた印象はなんのその、住めば都の心持ちだ(この物理的には狭いけど無限に広がる心のありようは、熊野寮の日々を思いだす)。飛行機のエコノミークラスと比べると月とスッポンである。
 
妻が、喉が渇いた〜、と先ほどスーパーで購入した水を飲もうとペットボトルの蓋を開けようとして、プシュ〜ッという音とともに溢れ出してきた炭酸水に笑っている(またしても水と間違えて炭酸水を買ってもうた…)。蓋を少しあけて炭酸が収まるのを待つが、いつまで経っても泡がおさまらない。すごい炭酸だ。水が飲みたいぜ〜、と妻は嬉しそうだ。飲んでみると、炭酸水も結構美味しい。
 
部屋で一息ついたら、列車を探険したくなる。個室列車や、四列座席列車を経由して、食堂車に到達。連結部分の扉の開閉方法に個性がある(毎回、ボタン形状や扉形状がバラバラで、バラエティに富んでいる。バラバラの語源はバラエティか、と日記を書いていて気がつく。間違いかもしれない)。
 
食堂車は素敵な内装だが、お高い感じではなく、ファーストフード的な利用。サンドイッチやパン、各種スナック・飲み物を販売している。食堂車の先には犬と一緒に乗れる車両がある。ハスキー犬のにおいに反応して犬に吠えられたりすると他の乗客に迷惑かもしれないので、そこから先はやめておいた。
 
部屋に戻ってシャワーを浴びてみる。押しボタン式。列車の中でシャワーが浴びられるなんてそれだけで贅沢なので、温度調節がよくわからないとか些細なことは気にしない。シャワーを浴び終えて気持ちよく窓際に座ると、夜の20時にも関わらずひたすらに明るい森林風景が続く。国土に占める森の面積は50パーセントどころではないだろうなあ、などと想像する。
 
時間がたくさんあるので、一時間半くらいかけて日記を書く。明日からヘルシンキに3泊もさせていただくらしい。なんという贅沢…。休暇の長さに申し訳なさが募りそうだが、この休暇をバネに、またご恩返しに励もう、そしていろいろと勉強しよう、と心に誓う。
 
23時前、ガイドブック確認や車窓からの風景も堪能し終え、眠る。心なしか、ロバニエミよりも日が短い気がする(夜の23時に夕陽が照っている時点ですごい話なのだけれど…。笑)。